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2008年7月24日






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株式会社岩の原葡萄園 製造部/上野翔さん
オシゴトの内容は?
ワイナリーのさまざまな仕事をしますが、主にワイン瓶詰めの監督・オペレーターをしています。瓶詰め機械がトラブルなく安定して稼働するよう管理します。ほかにもぶどうの栽培からワインの醸造まで、製造全般を幅広く行います。

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「就職した方が、気持ちが楽になる。」精神科医 香山リカ氏


●かやま・りか

1960年、北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒。精神科医。帝塚山学院大学人間文化学部教授。
臨床経験を生かし、各メディアで社会批評、文化批評など幅広く活躍。精神科医として現代人の心の病について洞察を続けている。主な著書は『就職がこわい』『「心とおなか」の相談室』『「こころの時代」解体新書』『老後がこわい』など多数ある。

近年、景気回復に伴い、新卒の就職率は回復しつつある。しかしそれとともに「格差社会」・「競争社会」とも叫ばれている。今までにない社会を迎えつつあるこの時代で、働くために必要なこととは一体何なのか。精神科医として活動する傍ら、数多くの著書を手掛け、現代人の心の病について洞察を続けている香山リカ氏にうかがった。


 

−ー 香山さんは精神科医という仕事のほか、大学で教授もされていますが、実際に学生と接する中で現在の若者の職業観についてどのように感じていますか。

私は教員もするようになって8年ほどたちますが、その間にも学生の職業観は変化してきたと思います。教員になったばかりの8年前は、社会に出るのが怖いとか、社会の役に立たないんじゃないかとか、自分なんて採用してくれる企業はないんじゃないかとか、そういったおびえを持った学生が非常に多くて、就職活動そのものに着手できない人が多かったように思いますね。でもそれは裏を返すと自分に対して夢を持っていて、どうせ働くなら自分が生かされる、やりがいのある職に就きたいという気持ちが強いからこそ、自己を卑下するという二重構造になっている気がしました。単に自信がないのではなく、自分はできるんじゃないかという期待もある。それができないのであれば、何もしないほうがいいという気持ちが入り交じっているんですね。しかし、その後フリーターやニートが社会問題化してきて、特にここ最近は格差社会などと呼ばれ、学生たちにも「今の社会は難しい、シビアだ」という現実があらゆるところから伝えられて、意識も変わってきたように感じられます。


−ー それは具体的にはどういったことでしょうか。

私が勤めている大学は、大阪の外れにある、いわゆる地方なんですが、就職に対して現実的な選択をする学生が増えてきています。内定率は上がってきているのですが、こっちから見ていると、すぐに採用してくれそうな地元の販売職とか営業職に進む学生が多いんですよ。別に販売や営業がダメってわけじゃないのですが、やりがいのある仕事をしたいという夢すら持たなくなってしまって、自分を採用してくれるところならどこでもいいという考えになっている。私から見ると、大学で学んでいる心理関係の職に就くとか、教育関係に進むとか、もっとクリエイティブな仕事もできるんじゃないかなとか、あらゆる選択肢があると思うのですが、最初からそれをあきらめていて、とにかく地元で正社員になれるならどこでもよくて、大学で学んだこととはまったく違う方向に進む学生が多いです。現実的でいいなと思う半面、もう少し夢を追ったり、自分を高く見積もったりしてもいいんじゃないのかなと思いますね。


「就職活動は楽しんで取り組んでほしい。」

−ー 選択肢を自ら狭めるのはもったいないですね。

私の世代は雇用機会均等法ができたような時代なので、仕事は勝ち取ろうという社会でしたけど、今の時代は、「女の子に生まれちゃったので仕事が限られている」とか、あきらめがいいんですよね。別に女性だって何の仕事でもできるんだよと言っても、「私は女性だから事務でいいんです」なんて言う子が多いですね。性別に関係なく、「これがやりたい」といった情熱を持った学生が少ないんですよね。


−ー 香山さんの学生時代は働くということについてどのように考えていましたか。

実は私は医学部志望ではなく、希望の学部に入れなくてたまたま医学部に入ったんです。医学部というのは6年間もあるので、最初は医者になるという意欲がわいてこなくて、非常に困りましたね。かといって辞めて何になるかというのもなかったので、なんとなくそのまま続けていました。精神科というのも、外科や内科は私には無理だと思って選んだようなもの。ただ、私の時代は就職をしないという選択肢はなかったので、卒業後は自分で食べていかなければいけない、という気持ちだけはありました。親も「大学を出たら一人で食べてもらうよ」と当然のように言っていましたから。もし私も今の時代に生まれていたら、フリーターになっていたんじゃないかなと思います。


−ー それは意外ですね。でも、働き始めたからこそ今の香山さんがあるように、働き始めたからこそ分かることは多いのでしょうね。

仕事はほとんどの人にとっては、目的ではなくて手段だと思うんです。スポーツ選手のように好きなことを仕事にできて、仕事が目的になっているのは素晴らしいことですが、普通に働く人にとっては、ある種の手段だと思います。それは何のためかというと、生活のための手段ですが、自分が社会の一員として行動したり発言したりするときの足の置き場だと思うんですよね。もちろんフリーターだと社会に参加していないのかというと、そんなことはないと思うのですが、本人自身もどこに足を置いているのかが不確かな部分もあると思います。


−ー 正社員と非正社員の格差が問題になっていますが、正社員になる大切さについてはどのようにお考えですか。

私は全員が正社員になればいいとは思っていません。フリーターでも自分に自信があって、あとの時間は好きに使うというのであればいいと思うんですよね。でも多くのフリーターは、これじゃいけないとか、自分に自信がなくなっていくことが多い。会社の肩書や名刺がないと発言できないというのは悲しいことですが、私を含めて多くの人たちはそれほど強くない。たとえば何かを発言するときも、肩書があったほうが落ち着いて人と話せるし、言いたいことが言える。それは別に肩書に頼っているのではなく、人の習性として誰にもあることだと思うんですよ。そういうものを手に入れるためにも、正社員になるというのはいいと思います。逆に言うと、その程度のことなんじゃないのかなとも思うんですよね。


−ー ところで、もし香山さんが面接官ならどのような学生を採用しますか。

いわゆる理想的な学生というよりは、その人自身の人柄の良さとか、そこでやりたいという気持ちが自然に出てくる人がいいですね。面接のコツなどのマニュアルを読んで、その通りに話す人もいますけど、それよりはその人自身の感じの良さ、たとえばいすに座るときに静かにいすをひいて座ったりするだけで、「この人は電車の中でも人に席を譲ることが自然にできる人なんじゃないかな」と想像できます。その人の本来の良さというのは、アピールしなくても自然に出てくるもの。アピールしすぎて演技っぽくなるのが一番よくないですからね。自然にしている人が一番いいと思いますよ。


−ー 最後に、就職を控えた学生に向けてメッセージをお願いします。

学生生活を続けるなかで直面する就職活動というのは、それまでの生活とはかなり異なるもので、大人が自分のことを評価したり、不合格というのを突きつけられたりして、誰にとっても傷つくことだと思うんです。できればやりたくないし、怖いっていうのは分かりますね。ただ、私もいろんな学生を見てきていますが、就職試験の合否というのは成績ではありません。タイミングとか運とか偶然とか、そういった要素も多いと思うんですね。私も入試の面接官をやるのですが、5分くらいで相手の適性や能力なんて分かるわけなくて、いわゆるフィーリングのようなもので決めてしまわなければいけないこともあるんです。でも、選ばれる側からすれば、何で駄目だったんだろうと落ち込んでしまうと思う。就職活動は未知の世界で怖いと思いますが、知らない世界を見てやろうとか、大人ってどんな態度で話すのかというのを、楽しんでやろうというくらいの気持ちで取り組んでほしいです。就職しなくても自分らしく楽しく生きられるのであれば、それはそれでそういう生き方を目指してほしい。ただ、ほとんどの人が、就職した方がしないよりも気持ちが楽だと思います。ある程度の時間は拘束されますが、仕事をやり遂げたとか、一週間終わったというような満足感は、人間を支えてくれるものです。あまり深刻に考えすぎることなく、とりあえずあらゆる出合いのある職場に足を置いてみるというのは、悪いことではないと思いますよ。


そもそも就職とは一体なんなのか。多くの人は、どこの会社に入るのかという「就社」の意識が強いのではないだろうか。もしくは、やりたいことを実現するために働くという「自己実現」。正社員と非正社員の雇用の格差が問題となっている現在では、「正社員になる」が目的となっている場合もあるだろう。しかしそれ以前に、社会に出るということに大きな意味があるのだと思う。そしてそれこそが、若者の不安な気持ちの根源なのではないだろうか。心の奥底にある、自分自身が傷つく怖さ。香山さんは、そんな若者の心の奥まで考えたうえで、恐れることなく、もっと気楽に、肩の力を抜いて就職活動に取り組むべきだと話してくれた。自分の思いを大切にしつつ、未知の世界を楽しむ気持ち。香山さんの表現は、いつも強く、そしてとても優しい。 (Text:山田英行)


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